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2016年11月 8日 (火)

想像力の欠如が

大変痛ましい事故が起きました。
神宮外苑展示物火災事故です。

第一報では木屑に火が点いた、とのことでしたが、続報で展示物の画像が放映されたのを見て愕然としました。

木で組んだジャングルジム状の構造体に、大量の木屑が絡みついているというもの。

そう、報道では木屑と表現されていますが、一口に木屑と言っても、実は様々な形態があってそれは多彩なものです。
おが屑、鉋屑、木っ端などなど、、製作段階で様々な木屑が発生し、それぞれによって形態も性質も異なりますので、それぞれの燃えやすさも大きく違ってきます。


様々な木屑の中で、展示物に使われていたのは大量の鉋屑(かんなくず)と思われます。
恐らくは、小箱や割り箸などを作る過程において、製材・成形時に発生する鉋屑で、どこかの木工所で出たものの廃物利用ではないかと推察します。

そして、この鉋屑があらゆる木屑の中でも最も燃えやすく、私もこれが大量に出たときには発火源となるものが近くに来ないよう、常に気を使って取り扱うようにしているものであります。
大量の鉋屑は、大量の紙片と同じようなもので、マッチ一本で簡単に火がつき、あっという間に燃え上がります。

しかも、構造体はジャングルジム状で空気の通りは極めて良く、燃えやすい鉋屑を大量に、最も燃えやすい形態で積み上げているわけですから、火がつくと一瞬で燃え上がるであろうことは容易に想像がつきます。


そう・・・容易に想像が・・・我々木工関係者ならば、、分かるのです。


昨日、夕食の時にそんな話をしていたら、家人からは・・「えっ 木ってそんな簡単に火がつくの?」という反応が帰ってきました。

木工人にとっては常識であることも、一般には必ずしもそうではなく、おそらくはこの展示関係者も鉋屑が危険物であるという認識はなかったのでしょう。

発火源は投光器ではないかと言われているようですが、それ以外でも、例えばタバコの灰を落としただけでも同様のことが起こった可能性は高く、極めて危険な代物であることは否定のしようがありません。


こう考えてくると、鉋屑の危険性に対する認識、あるいは想像力の欠如がこの事件の本質と言えるように思いますが、しかし、その想像力も、常に木工現場にいる者でなければ働くことはないでしょう。
もちろん、展示者の責任は問われてしかるべきですが、責任を問うことは、鉋屑に対する想像力の欠如を攻めたてることに等しく、恐らくはその認識をまるでもたなかったであろう学生にそれを問うても、虚しさとやりきれなさばかりが募る気がします。


準備から展示に至る何処かの段階で、、誰か一人でも木工関連者の目に引っかからなかったのか?
と思われてなりませんが、もはや後の祭り・・です。

知らなければ想像力も働かない。
その背景の中で小さな命が消えてしまった悪夢のような事故。

言葉が上滑りするような虚しさを感じながらも、ただ男の子のご冥福を祈るばかりです。

合掌

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コメント

全く残念な事件です。

かつて炭鉱事故と言えば、粉塵爆発か落盤でしたが、燃焼の形態はことなるものの、大量の可燃物が空気と混合された状態の危険性は同じなんですよね。

平尾台の野焼きの事故も同じようなことでした。

火をつければどうなるか、理屈でなく擬似でも良いから経験していれば、こんなことは起きるなかったのでは。悔やまれる事件でした。

投稿: 宮下 一万太 | 2016年11月 8日 (火) 13:22

一般的なヒノキというのも火の木からきたもので、
火おこしするための棒にヒノキを使ってた由来だときいています。
松明には、肥松の脂松をつかいます。
それくらい、油分を含んだ材は燃えやすいです。

この展示物をやられていたのは建築士の卵となる学生だったそうですが、やはり最近の建築には木はだんだん無関係になってきているなということを切実にかんじました。

今日も銘木団地の方と話しましたが、もう材料がない、使う人もいない、一部の好きな人だけで回っているとのことです。

最後はバブル時代の回顧録で終わるんですよね。

若いうちに木に興味を持つのはちょっと今のご時世難しいと思います、そういう学生を教育するのも大変だとおもいます。

非常に残念な出来事ですが、ちょっとした常識があれば簡単に防げたことなので、悔やまれますね。


投稿: 名無しさん眠い | 2016年11月 8日 (火) 21:38

連投すみません。

心配なのが、コンセントに溜まった木屑、ゴミ

あれも発火原因になりませんかね?

ショートして火花が出たら燃えそうな感じではあります。

コンセントに掃除機をかけることは毎月の出来事になりつつあります。

電気火災は怖いです。

投稿: 名無しさん覚醒 | 2016年11月 8日 (火) 21:41

宮下さん
コメントありがとうございます。

おっしゃるように、粉塵も大変危険で、木工所でも過去に粉塵爆発によって火災が発生した事例もあります。

物づくりにおいて、様々な場面において想定される危険性を事前に十分吟味するのは、イロハのイなのですが、物づくりを教える大学側が、この点においてどのような認識を持っていたのか?

これが、今後の捜査によって明らかにされることを期待しています。

それにしても、本当にやりきれない事故です。

投稿: 栗原@simple | 2016年11月 9日 (水) 08:58

名無しさん コメントありがとうございます。

木を扱っている人間にとって、鉋屑が極めて燃えやすいことは常識なのですが、一般では必ずしもそうではなく、この認識不足が招いた悲劇的な事故ですね。

ネットではやはり批判の嵐が起こっており、非常識だとの声が大勢ですが、これらは相当数は後知恵であり、事前に鉋屑の危険性が分かる人間が何人いるのか? と問われると、その数は極めて少ないことだろうと思われます。

そもそも、鉋屑を実際に見て、実際に触れたことのある人は一体何人いることでしょう?

昔は町中にも木工所があり、おが屑も鉋屑も普通にあったものですが・・
(カブトムシを飼うのによくもらってました)

昔の常識も、今では必ずしも常識ではない。
この中で起こった悲劇です。

学生を責めても虚しいだけですが、せめて大学側の危機管理機能がどうであったのか?
その点が明らかにされればいいなと思ってます。

ところで、コンセントのホコリはトラッキング火災を引き起こす原因になりますので、危険です。

最近のコンセントは、トラッキング防止機構がついていますが、古いものにはそれがないため、特に注意が必要ですね。

実は・・・
過去に知り合いがトラッキング火災で命を落としました。

これも、ちょっとした知識があれば防げたことなのですが、取り返しの付かないことになってしまい、今でも大変残念に思ってます。


最近は地震もあり、道路は陥没して、迂闊に歩くこともできないご時世ですが、お互い気をつけましょうね。

投稿: 栗原@simple | 2016年11月 9日 (水) 09:08

ほんとに痛ましい事件でした。私がデザインの仕事をしてるのと現場がわりと近くなので、大学や学生の無知と不注意さにむしょうにハラが立ちました。いくら木工に無知でも、あれでは燃えるのは当たり前だと考えるのが普通です。ライトが原因じゃなくとも、例えばタバコの灰など落ちて発火したら一瞬で火ダルマになるし、起こるべくして起きた事故でしょう。大学側はどう責任をとるつもりでしょうね。

投稿: ワカホイ | 2016年11月12日 (土) 23:30

ワカホイさん、コメントありがとうございます。

作品の企画段階から製作、展示に至るまでの間、様々な人の目に晒されていたであるはずなのに、その中で誰ひとりとして危険性に言及するものはいなかったのか? と残念に思います。

ただ、報道によると、事故が起こる前にその危険性を指摘した一般観客がいたようですが、どうも黙殺されてしまったようです。

さらに疑問なのは、展示作品の中に人が入ることを許容していたのか? 
そもそも、中にはいっても良いという性格の展示だったのか? 

本来は立ち入り不可のところを、男の子が入ってしまったのか?

この辺の事情については全く報道がなされないので詳細はわからないのですが、それによっても責任区分は大きく変わってくるようにも思われ、なかなか判断が難しい事件と言えそうです。

いずれにしても、目の前でこどもを失ってしまった親御さんの心情を思うと、同じく子を持つ親としていたたまれない気持ちになります。

悲しい事故です。

投稿: 栗原@simple | 2016年11月14日 (月) 11:25

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