« 風邪 | トップページ | 永遠のゼロ2 »

2012年12月23日 (日)

永遠のゼロ

永遠のゼロ(百田尚樹 講談社文庫)読了しました。
久しぶりに感銘を受けた小説でした。

この小説がベストセラーとなっており、どこの書店でも平積みされているのは以前から知ってはいたのですが、ベストセラーであるほど敬遠したくなるという生来の天邪鬼な性格のため、しばらく手にすることはありませんでした。

また、永遠のゼロというタイトルを見ただけでは、その意図するところがが俄には分からず、何やらファンタジー的なものかいなぁ などと勝手に思っていたものです。
(ファンタジーは唯一苦手な分野なもので・・・)

そんな折、とあるテレビ番組に著者の百田尚樹氏が出演しており、その際にこの小説に対するトークが交わされたのを偶然目にしました。

ゼロ・・・零戦のことだったのですね。
そして、特攻で散った一人の兵士を描いた小説であるということも・・

となると、これは読まずにはいられない・・
その足で本屋に行き、購入した次第です。


この小説の主要な登場人物である佐伯健太郎は現代に生きる26歳、司法試験を4年連続で落ち、目標を失いニートのような生活をしています。
それが、ひょんなことから自分の祖父のことを調査するという事態へ誘われていきます。

健太郎の実祖父は神風特攻隊に志願して、沖縄戦で死亡していたのですが、そのことを知ったのは6年前に実祖母が亡くなった時でした。

血がつながっている祖父であるとはいえ、もはや遠い過去の人であり、健太郎にとっては突然知らない幽霊が現れたような話です。
さほど興味も持たず調べ始めたのですが、祖父の戦友だった人に話を聞くに連れ、少しずつ祖父の人となりが分かり始め、同時に大きな疑問も湧いてくるようになります。

あの時代、大東亜戦争時に生きた若い世代に何があったのか?
彼らは何を考え、何に思いを馳せ、何を守るために死んでいったのか?

祖父、宮部久蔵はその中でどのように振舞ったのか?

物語は、当時の戦友たちへインタビューを行い、彼らの独白を聴くという形で展開します。

宮部久蔵は天才的な飛行技術、戦闘技術を持ったパイロットだったが、しかしその天才性とは裏腹に、臆病者とか卑怯者とのレッテルを張られることもある人物だった。

命を捨てることが美徳であると言われた当時の戦時下にあって、命を大事にする、生きて帰るということを言うに憚らず、戦場では逃げてばかりだった。

最初の頃にインタビューした人たちからは、これらのように否定的な評価が下され、健太郎は打ちのめされてしまいます。
臆病者・・・今の自分に重ね合わせ、目標を見失ってふらふらしている自分には、やはり祖父の血が流れているのだろうか?

さらに、健太郎の姉が慕う新聞記者からは、特攻隊というのは狂信的愛国者として洗脳された集団であり、特攻はテロ行為に等しいなどという言葉も浴びせられるのですが、それに対する漠然とした違和感を感じながらも、それを否定することも修正することもできないもどかしさ・・
考えてみると、自分はあの戦争のことを何も知らないということに思い至らされるのです。

ここに来て、私達読者は一気にこの物語に引きこまれていきます。
そう、この佐伯健太郎はまさに私であり、私達なのです。

あの戦争のことをどれだけ理解しているだろう?
神風特別攻撃隊とは一体いかなるものであったのか。
そこに志願した、あるいは志願を強制された人たちは、何を考え、何を思い、何を悩み、何に葛藤し、どのようにして死を受容していったのか?

ページをめくるたびにベールが1つずつ引き剥がされていくようで、次第にそれらの全体像が明らかになっていくのです。

つづく・・


|

« 風邪 | トップページ | 永遠のゼロ2 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 風邪 | トップページ | 永遠のゼロ2 »