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2009年1月 8日 (木)

反貧困8

私の周囲に起こった実例を述べます。
ただ、関係者に迷惑がかからぬように、事実の本質を外さない程度にストーリーを改変しています。
史実と歴史小説との関係のようなものとご理解ください。


A君の場合・・
A君は今までに定職についたことがなく、アルバイトを繰り返す、いわゆるフリーターでした。
やりたいことが見つからないという、今ではごく平均的な若者だったともいえます。

あるときひょんなことから木工に触れ、これが自分が一生をかけるべき仕事と見定め、訓練校へやってきました。
ついにやりたいことが見つかったのです。

しかし、フリーターであったため雇用保険への加入はなく、失業給付はされません。
国民健康保険にも加入してなく、国民年金は払ったことがありません。
なので、訓練校にいる間は全くの無収入で、無保険の状態です。

いわゆる公的なセーフティーネットからは完全に抜け落ちており、収入はなく、怪我も病気も出来ず、綱渡りをしているような剥き身の状態であったといえます。

ただ、住む所はありました。
実家に一人で住んでいると言っており、両親や兄弟との関係がどのようになっているのかについては聞きませんでしたし、本人も笑って話そうとはしませんでした。
いずれにしろ、肉親とは疎遠であったようです。

若干の蓄えはあったようですが、すぐに経済的に逼迫するようになりました。
彼は、木工の修行に励む前に、何よりも食べていかねばなりませんでした。

土日と、平日の夜にガソリンスタンドやコンビニでアルバイトを始めました。

そのうち、家の近所にある木工家と親しくなり、そこで木工を教えてもらうようになったようです。
それで、卒業を待たずに訓練校を辞めていきました。
彼は刃物の研ぎなどの基本的な手業についてはきわめて優秀で、もったいないからと引きとめたのですが、彼にとっては何よりも訓練校までのガソリン代がもったいなかったのです。

その後のこと、木工での独立の夢が絶ち難く小さな納屋を見つけて改造し、友人の木工家から譲ってもらった機械を導入し、開業を果たしました。
ただ、開業と言っても素人のDIYにも満たない脆弱な状態でした。

蓄えがないので十分な材木を買うことが出来ず、機械を整備することも叶わず、そしてやはりまず食べていかねばならないことはなんら変わりがありません。

昼間にアルバイトをして、夜に製作をする日々でした。
しかし、職業木工は製作だけでは成り立たず、それを売るためのルート作りをしなければなりません。
ところが、彼は日中アルバイトに行かなければなりませんので、営業が出来ないのです。

営業しなければ家具が売れず、家具が売れなければ収入がなく、収入がなければ材木を買うことも機械の整備も出来ないという悪循環が彼を襲います。
アルバイト料はわずかで、日々の生活を支えるのにぎりぎりでした。

このような八方塞ともいえる環境の中で、彼の木工への夢は潰えていくこととなってしまいました。


つづく

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